日系社会を覆いつくす
先日(6月21日~22日)「移住者と連帯する全国フォーラム2025 in 北関東」で発表した「外国人労働者の現状」要旨です。
1889年以降、日本からペルーへの移住が、1908年からはブラジルへの移住が始まり、日本から多くの人々が南米へ移住しました。しかし、1985年ブラジルは軍事政権から民主政権に移管、その後南米は経済の低迷とともに治安が悪化、移民のみなさんが日常生活に困窮していました。一方、その時日本はバブルに向け経済が急拡大、シーマ現象とも言われる景気の沸騰と人手不足が常態化、やむを得ず1989年出入国管理法改正で新たに「定住者」ビザが創設され(1990年6月施行)、日系二世・三世を始めとした来日者が急増することとなりました。35年の時を経た現在、当然の事ではありますが、在日外国人の高齢化や介護の問題が日常的に囁かれるようになりました。

改正入管法施行前は「定住者」という在留資格はありませんでした。当時子どもたちと来日し、現在も日本で老後を過ごしている日系人一世のみなさんは数多くいますが、上図の「在留ブラジル人」としてはカウントされません。
日系人の多くが非正規、単純労働、派遣で働いており、景気の調整弁的労働を担う中で、2000年のITバブルや2008年のリーマンショックでは大規模なリストラに遭遇、リーマンショック時は瞬間風速でおよそ90%の日系人が解雇されました。また、2020年の新型コロナ禍では、解雇ではなく、時短で生活ができなくなるまで労働時間を減らされ、ルームシェアをせざるを得なくなったり、子どもは不登校になり、ブラジル人学校の多くが閉鎖、又は休校となりました。
2020年3月、神奈川県小田原市の日系人団体から、大量の日系人が箱根の山を降りてきたぞと第一報が入りました。そこから私が代表を務めさせて頂いております一般社団法人日本海外協会による支援活動がスタートします。まず41室の一時保護施設の開設、フードバンク、子ども食堂等が始まります。次に実態調査です。私たちは、日系人を始めとした外国人の集住地域である愛知県知立市にある知立団地を選び、外国人労働者の実態を調査しました。結果はひどいもので、繁閑の生産調整を日系人で行っている実態には唖然とさせられるものがありました。

不安定雇用の中で日系人は、社会保険、厚生年金等セーフティネットの未加入者もしくは加入していても年数が10~15年が圧倒的多数であることが見てとれ、日本でこの程度の年金で老後の生計を維持することはほぼ不可能です。特に、未来に対する不安は切実で、この5、6年の内に「燎原の火」のごとく日系社会を覆いつくすこととなるでしょう。
2025年6月30日(月)